頚椎の骨と骨の間には椎間板という物質が挟まっています。この椎間板は、首を上下に動かしたり、左右に動かしたり、また、首にかかるストレスや衝撃を和らげてくれる役割を果たしています。
この椎間板が過度な圧迫や外的損傷を受けると、頚椎にストレスがかかり、椎間板の中にある髄核という組織が外にはみ出します。
そして、外にはみ出した髄核が神経根に触れることにより、首の痛みや手の痺れなど様々な症状を引き起こします。それが「頚椎ヘルニア」です。
何故、頚椎にストレスがかかると、髄核が飛び出し、神経根を刺激するのか、そのことについて、詳しくご説明していきたいと思います。
頚椎にかかるストレスには、主に2つのストレスがあり「縦のストレス」と「反るストレス」があります。図を使ってご説明すると分かりやすいので、下記の図をご覧ください。
「縦のストレス」とは、不自然な姿勢を長時間続けていると、正しい姿勢が保てなくなり、体全体のバランスが崩れ、体の一番上に位置する首に負担がかかってきます。このストレスを縦のストレスといいます。
「反るストレス」とは、何か強い衝撃を首に受けたとき(例えば交通事故など)、またはスポーツ(サッカー)などで首を急に反ったり、丸めたとき、横方向にかかるストレスを指します。
頚椎ヘルニアは主に「反るストレス」によって起こることが多いです。この「縦」と「反る」、この2つのストレスが原因となって、椎間板が圧迫され、飛び出た髄核が神経根を刺激して、首の痛みや腕の痺れを発症します。これが、頚椎ヘルニアの主な原因です。
また加齢によって、椎間板の水分が無くなっていき、椎間板が徐々に薄くなってしまうことで、頚椎ヘルニアを発症することもあります。これは高齢者の方の主な原因として多いものです。
しかし、歳をとってから頚椎ヘルニアを発症する方というのは、やはり若い頃の生活習慣に問題があった方がほとんどです。
頚椎に負担をかけるスポーツ(サッカー、ラグビーなど)をやっていたり、首に負担をかける仕事(デスクワーク、力仕事など)を長年続けていたり、また逆に全く運動をしてこなかった場合も、頚椎ヘルニアを発症する一つの原因になります。
頚椎ヘルニアは首を補助できる筋力があると、発症する確率は格段に少なくなります。その理由は、頚椎にかかる負担を筋力で補うことができるために、頚椎への直接負担が減るからです。
しかし、首を補助できる筋力がないと、頚椎に直接負担がかかり続けることになり、時間の経過とともに椎間板が徐々に潰れていってしまうのです。
ですが、過度の運動による衝撃は頚椎ヘルニアを発症する原因にもなります。ですから、やり過ぎは良くないですし、逆に全く運動をせずに体を鍛えてこなかった場合も、頚椎ヘルニアを発症する一つの原因になってしまうのです。
歳をとれば必然的に椎間板内部の水分が減っていき、椎間板が脆くなっていくのはしょうがないことです。しかし、歳をとっても頚椎ヘルニアを発症しない方は大勢います。この差は何かと言えば、今までの生活習慣が一番大きな原因だと考えられるのです。
頚椎ヘルニアはとても辛い症状です。主な症状としては、首の痛みや手の痺れ、肩の痛みなどです。また人によっては、頭痛や吐き気、めまいや立ちくらみなどを起こす人もいます。
痛みは夜になればなるほど強さを増すもので、不眠になってしまう人もいます。痺れに関しては指先にいけばいくほど痺れていきます。
また、神経が圧迫されている部位によって、右手に痺れを訴える人もいれば、左手に痺れを訴える人もいます。また、腕の内側、外側など、圧迫されている神経部位によって痛み、痺れが異なります。
症状が悪化すると、文字を書くのが困難になってしまったり、ボタンを留めることが難しくなってしまいます。また、脊髄神経に触れてしまうため、症状は上半身だけでなく下半身にも及びます。歩行障害や排尿障害などにも発展していきます。
一般的に排尿障害がみられ始めたら手術を検討すると言われています。以前は切開手術が主だったのですが、近年では医療技術の進歩によりレーザーでの治療が可能になっています。輸血や感染症の心配もなく、日帰りで行えるので非常に便利です。
しかし、レーザー治療でも切開手術でも、術後の再発の危険性が大いにあります。その為、手術はなるべく避けて、人間本来が持ち合わせている自然治癒力を高めて治す、自然治癒治療が頚椎ヘルニアにはとても有効となります。
頚椎ヘルニアの痛みや痺れを人間が本来持っている自然治癒力を用いて改善させる方法にお薦めなのが、運動療法によるストレッチやトレーニングです。
まず、ストレッチで圧迫されている椎間板を広げていきます。そして、「縦のストレス」や「反るストレス」によって飛び出した髄核は、人間の自然治癒力が働き、本来の位置に戻そうと働きます。
そして、飛び出した髄核のカスを食べてくれる細胞が人間には備わっています。その自然治癒力を最大限に利用し、ストレッチとトレーニングによって、痛み、痺れを軽減させていきます。
これはミクロの世界の話で、ほんの数ミクロでも神経を圧迫している椎間板の出っ張りが収まれば、症状はどんどん楽になっていきます。
また、頚椎周りをトレーニングで鍛える必要な理由としては、人の頭は体重の約5%を占めるとも言われており、起きている間は、この頭を頚椎は常に支え続けていることになります。
また最近では、スマートフォンやタブレットなどを持つ方が増えたことにより、より一層頚椎には負担がかかっています。スマートフォンやタブレットで一番悪いのは、首を前に倒して画面を見続けることです。
ただでさえ、起きている間は頚椎に大きな負担を掛けているのに、首を前に倒して画面を見続けるということは、あなたが思っている以上に首に負担を掛けているのです。
最近、女性に限らず、男性にも頚椎ヘルニアやストレートネックを若くして発症してしまう方が非常に増えているのは、このような生活環境の変化があるからなのです。
この首への負担を減らすには、ストレッチなどで疲れた首周りの血行を良くしたり、筋力トレーニングを行い、首に筋肉のコルセットを作ってあげることが必要なのです。
また、体全体のバランスが崩れてしまっていると、積み木と一緒で人間の体の一番上にある首は不安定な状態になります。そうなると、自分では気が付かないうちに、体のバランスを無理に取ろうとして、首にかなりの負担を掛けてしまっていることがあります。
体のバランスが崩れているのは、本人ではなかなか分からないものですが、毎日の体のケアを怠っていると、体のバランスというのはほぼ間違いなく崩れていると思ってください。
人は毎日の生活の中で様々な環境にいます。例えば、通勤ではいつも右肩にバックを掛けている、足を良く組む、スマホやパソコンを毎日3時間以上やるなど。
また人は歩いているだけでも体のバランスというのは崩れるものなので、体のケアを毎日するということはとても大事なことなのです。
そして、人は下記の図のようにS字カーブを描くことが自然な姿勢となるのですが、体のバランスが崩れていると、このS字カーブを描くことが出来なくなります。
このS字カーブが崩れると、下から順に様々な症状を引き起こしていきます。まず、腰の痛みや膝の痛みから始まり、背中の痛み、肩こり、首の痛み、頭痛などが起きていきます。
この崩れた体のバランスを改善するには、体の歪みを矯正してあげることが必要になってきます。そして、体のバランスが崩れる一番の原因は、土台である足のバランスが崩れることから始まります。
ですので、頚椎ヘルニアを根本から改善させるには、頚椎部分ばかり診るのではなく、体の土台である足から診て、治していくことが必要なのです。
ストレッチで崩れた体のバランスを矯正し、その後、大腿部を中心に体全体の筋力強化を図り、頚椎周りの筋力を付けていくことが、頚椎ヘルニアを根本から改善させるのには必要なことなのです。